Q:なぜ耐震強度偽造は起こったのか?

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Q:なぜ耐震強度偽造は起こったのか?

設計事務所が構造計算書を偽り、耐震性のない建物をつくってしまったという事件の一連の報道が伝えられていますが、
耐震偽造が起こった背景を要点化すると、以下の3つが考えられます。

1設計事務所のモラルハザード
2発注側のコスト・効率優先の姿勢
3民間確認検査機関のコスト・効率優先の姿勢

この事件の構図は、
発注者が設計者に安くそして早く図面作成・手続きをするよう要請
→設計事務所は構造計算書を偽り、審査の早い民間確認検査機関へ提出し確認を得る。
→コストダウンが図られた設計と、速やかな工事着手により経費削減。
という構図ですが、コストと人命の安全が引き換えられるという、あってはならない事件であることがわかります。


1番の設計事務所の倫理欠如が最大の直接的原因ですが、2、3の要因も背景にあったことが強くうかがえます。
まず、構造計算書の偽造が、恒常的にどこでも行われているのではないか?
という誤解が社会に広まることが懸念されますが、これは通常はありえない話です。
ブラックボックスの構造計算を専門家が偽るというのは、あってはならないことで、我々の業界でもこれは特異な例です。
専門家による構造計算は、適正、厳格、最優先であり、コストダウンや施工上の納まり、
その他いかなる要因もこれに優先しないというのが、我々建築関係者の常識(良識)です。
この事件はその常識に風穴を開ける事件なのです。

建設に携わる各スタッフが、本当に構造計算書は正しく計算されているのか?
という疑いの目を持つ機会は、建築生産の現場では通常ありません。
仮に、なんかおかしいのでは?と疑問を感じても、「しっかり構造計算されているし、
確認もおりているから問題ない」と言われれば、「あ、それなら安心。」といってしまう場面が容易に想像できます。

建築は、杭、コンクリート、鉄骨、電気・機械設備・・・など多くの工種により成り立つものであり、
各工種ごとにそれぞれ専門的な技術基準・計算を背景に仕様・設計が組まれています。
これら専門家による分業の一つ一つをいちいち疑って仕事をしていては、建物はいつまでたってもつくれませんから、
ある程度、適正・妥当なものであるとの前提に立ち建築生産活動が行われるのです。


また、民間確認検査機関の審査も、有資格者の設計により法律上支障ありませんとの前提で提出されているものであるため、
偽造を見抜けなかったことによる責を100%求めるのは、いささか過剰であると考えられます。
そもそも確認審査とは、偽造を見抜く審査ではないのです。「この申請は建築基準法に適合しています」
と申請されている書類を限られた期間でチェックするものですから、ある程度申請主義を尊重せざるを得ません。
一般的には、条文解釈の相違や設計者の勘違い・錯誤・記載漏れなどがチェックされ是正されます。

「この構造計算書は偽造があるかもしれない」との視点で再計算するかのごとく、電卓を叩いてチェックすることは、
大いなる社会損失であり、建築士という資格の存在意義にも及ぶ話です。
まして、民間確認検査機関ではスピードが勝負であり、細かい指摘をあげつらって申請者に訂正の負担を求めれば、
自ら大事な顧客を逃がしていることになるのです。


このような、建築生産と建築確認の現場における背景がこの事件に大きく作用していることを理解した上で、
今後の対応を議論する必要があります。

万事が結果論として語られ、後になって犯人探しと責任追及をするのが世の常ですが、特に建築の世界は専門性が高く、
多数の建設関連スタッフが関与し、つくり上げるまでの時間がかかるため、建設過程において、あるスタッフの
わずかな倫理欠如・過失により、人命や生活に大きく影響のある問題に発展する可能性を、耐震以外にも常にはらんでいることを、
やはり強く認識したいものです。


このサイトで、再三述べていますが、
・国、社会、業者に何でもまかせて優良な建築成果を期待することはやめましょう。
・自分で建てる建物は自分で守らなければなりません。
・優良な設計者・施工者・工事監理者を選任しましょう。
・当然、必要な対価を負担する必要があります。
・最初の安いは、最終的には高くつきます。
これらを、肝に銘じて建物を造ることが大切です。

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